国内・海外の旅行やグルメなどを話題に全国ネットで放映中の人気旅情報番組「朝だ!生です旅サラダ」。同番組が3月、番組放送開始30周年を記念して「地域創生」をテーマに行った展示会イベントが「旅サラダEXPO」です。
大盛況に終わった同イベント。コロナ禍の中でどのような出会いやコミュニケーションが繰り広げられたのか。関西の人達と各地の街が出会って、なにが生まれ醸成されたのか、イベントの成果を振り返ってみます。
多角的なメディア露出で1万8300人を集客
「おっはようございまーーす!」
番組レポーター・ラッシャー板前さんの元気いっぱいの声が大阪梅田の春空に響いた。「朝だ!生です旅サラダ」の番組30周年記念イベント「旅サラダEXPO」のテレビ中継のオープニング冒頭だ。
同イベントが開催されたのは、2022年3月19日、20日、21日の3連休。場所はJR大阪駅直結で1日に数万人の人々が行き交う一等地、グランフロント大阪「うめきた広場」。
イベントの呼びかけに応じて出展したのは国内17の自治体や団体と海外7カ国の観光局、企業ブースが2社。それぞれ地元の魅力を存分に伝える個性的な展示を行い、関西の人々と交流した。
当初はオープンなイベントスペースを設営する予定だったが、開催時には大阪府に新型コロナウイルスの「まん延防止等重点措置」が発出中。会場を囲って入場制限をしながらの開催となり、入場には20分~30分の待ち時間が。最終的には各日約6000人、3日間合計で約1万8300人と、想定を上回る入場者数を記録した。
クローズドな設営のなか、たくさんの集客をなしえた理由は、19日の番組内で中継を行い、全ブースをラッシャー板前さんとABCテレビアナウンサーの増田紗織さんが紹介して回ったことが大きい。出展者との軽妙な掛け合いで各ブースの目玉展示を取り上げたことで、視聴者の期待値を高め、来場へと繋げた。
また特設ステージでは、番組出演者が登壇してのトークライブをはじめ、各ブース30分程度のステージイベントがあり、地方のご当地キャラなどが歌に踊りにクイズにと大活躍。また、グランフロント大阪内のレストランには出展者の各地のご当地食材を提供しての連携メニューが登場するなど、多角的な取り組みが功を奏したともいえそうだ。
テレビ番組が冠につくアドバンテージ
テレビ番組が地域創生イベントを主催することについて、朝日放送テレビイベント事業部の藤田高一郎さんはこう話す。
「イベントのターゲットは、旅行や物産展が好きな人。そこに番組を継続して見て下さっている視聴者の皆さんも加わって、たくさんの方にリーチできました。数回にわたるテレビ内での告知、特に番組内での中継を入れられたことで、楽しげでお祭りらしい雰囲気がダイレクトに伝わったと思います」とテレビの力との相乗効果を実感しているよう。
「このイベントは朝日放送グループの『地域創生』にむけたアクションのひとつです。『朝だ!生です旅サラダ』は、ラッシャー板前さんが、長年中継で各地を訪問してくれていたことから、もともと番組とご縁がある自治体や団体が多いんです。そういう意味では番組コンテンツの個性をうまく活用できたイベントだと自負しています」。
出展者それぞれに感じた手応え
実際に出展した自治体は、手応えをどう感じているのだろうか。3ブースを使って大きく出展した北海道観光振興機構の菊地具也さんに聞いた。
「今回はアイヌ文化と世界遺産・知床の展示、そして北海道観光PRキャラクターのキュンちゃんを前面に押し出したLINE公式アカウントのお友だちキャンペーンをうちました。新規にLINE登録をしてくれた方は2484人で、実に入場者の約13.6%です。」と笑顔。
また大阪の人々の親しみやすさにも驚いたという。「『ここ行ったことあるで』などと話しかけてくれる人が多く、話がよく盛り上がりました。アイヌ文化の展示は若い人でもじっと見入っている方がいましたし、実物大のイヌワシのぬいぐるみには、『本州にはないサイズ感』と驚きの声もあがっていました。出展者としても楽しめましたし、生の反応は非常に参考になりました」。
「総じて“コスパ”がよかった」と振り返る菊地さん。「やはりテレビは集客力が違うなと実感しました。告知やブースの露出も多く、立地も最高。コスト分の収穫はあったと思います」と話した。
新潟県の小林佳布さんも「大阪は話好きの人が多く、イベントとしてはとてもやりやすい環境だった」と話す。「呼び込みにもすぐに反応してくれますし、景品付きのアンケートなどには粘り強く回答してくれる人が多い印象です」。
今年新潟で開催されるアートイベント「越後妻有 大地の芸術祭 2022」の告知、佐渡の金銀山のPRなどを行った新潟県。6000枚用意したノベルティのマスクはすべてはけた。
「SNS映えスポットとして知られる清津峡(きよつきょう)や佐渡などは、知っている、行ってみたいという熱い反応が多く、新鮮でした。飛行機なら、伊丹、関空、神戸と関西3空港から発着便が出ており、60分から90分程度で新潟空港に到着することを最大限PRすると手応えがありましたね」。
ご当地キャラやインフルエンサーを多数動員したのも、成功の一要因と考えているそう。「サドッキーとレルヒさんというご当地キャラを目立つように配しました。ラッシャー板前さんにもいじってもらえてテレビにもよく映りましたし、そこからブースへの集客にもつながりました」。
いっぽう、「環境先進都市かめおか」とSDGsへの取り組みを前面に押し出して出展したのは、京都府亀岡市。担当の橋本広明さんは「今までのターゲット層ではない人とじっくり話すきっかけができた」ことを喜んでいる。
川下りで有名な清流・保津川の環境を守るため、「プラスチックごみゼロ」を目指し、条例でプラスチック製レジ袋の提供を禁止して、マイバッグ持参を推進している亀岡市。今回展示・販売したのは、廃棄されるパラグライダーの布をアップサイクルして作られた「HOZUBAG(ホズバッグ)」だ。一つひとつ手作りでデザインされた同製品は、地域活性化、雇用創出、福祉連携とさまざまな側面のストーリーをもつ。
「中継で大きく映してもらい、『テレビで見たよ』とたくさんの人がブースを訪れてくれました。HOZUBAGは1つ3,000円以上の価格がついています。100円均一のお店で買えるエコバッグと比較すると高価と言わざるを得ませんが、SDGs、脱プラスチックに取り組む亀岡市のストーリーをお話しすると、たくさんの方がご購入くださいました」と笑顔を見せる。
「従来のターゲットである、若くてサステナブルな物事に敏感な人たちだけではなく、今回はさまざまな世代の人が真剣に話を聞いてくれました。SDGsに興味をもっている方が多いことがわかりましたし、亀岡市の取り組みを大きく発信することができました。今回入場制限がかかったことで、一人ひとりのお客様とじっくりお話ができたのも、結果的にはよかったのかもしれません」。
今後の展望について、前出の藤田さんは「今回は『朝だ!生です旅サラダ』30周年の記念イベントでしたが、またこのようなイベントができたらいいなと思いますね。できればコロナ禍が収束して、旅行もイベントごとも万事のびのびとできれば」と話します。
「都会にいる人にとって、遠く離れた日本各地のモノ、人情、景色は、非常に心惹かれる」と話す藤田さん。旅とグルメをフックに、「地域創生」イベントして大きくなっていけたらと語ります。地元の宝である個性あふれる産物や景色と、遠く離れた土地の人々との出会いが、その価値を更に大きくすることを、会場の盛況ぶりや各出展者のそれぞれの手ごたえが証明しているように感じるイベントでした。日本各地で自身の土地の魅力発信を日々考えている方々にとっても大変参考になる取り組みではないでしょうか。